12月15日。6時に腕時計のアラームが鳴る前に目が覚める。頭痛は消えたが、高度が上がったせいか寒いせいか、血圧が高い。
支度を済ませ、ロッジの台所で竈の火にあたらせてもらう。昨日は気づかなかったが、奥さんがすごい美人でびっくり。7時にチベッタン・ブレッドとジャムで朝食。8時に出発し、奥のロッジを通るときに、ここからチュル・ウェストに登るフランス人グループに“Bonne continuation !”(引き続き頑張ってね)と別れの挨拶。
昨日と同じ渓谷の道を1時間あまり歩いてデウラリの茶店に着き、小休止(ロンリー・プラネットに“茶店の夫婦は喧嘩っぱやい”と注意があるが、ごく普通の人だった)。私がもの欲しそうな顔をしていたようで、テジくんがリンゴをおごってくれる。
デウラリから先は、さらに道が細く、すべりやすくなり、土砂崩れの標識が出ているところもある。
10時、トロン・フェディ(4540m)着。ロンリー・プラネットは、ハイ・キャンプは寒いし、高山病の危険があるので、ここで1泊して、トロン・パス越えをするよう勧めているが、ここからだと登りが1000mもあり、今日少しでも高度を稼いでおいた方が楽、というのがテジくん、アムリットくんの意見だ。
今回、ポーターを引き受けてくれたアムリットくんはマガール族で、おじさんがエベレスト登山隊に参加したこともある山の一家だ。話を聞くと、トロン・パスだけでなく、あちこちよく歩いている。英語が少し話せるし、体は強いし、そのうちいいガイドになる、とテジくんは言う。顔が長めで、ちょっとヴァンサン・カッセルに似ている。最初は隠していたが、テジくんと違って煙草もお酒もやる“大人”だが、実は童顔のテジくんより1歳下である。
さて、トロン・フェディからいよいよ峠越えに入る。道はトゥクラ・パスに似たモレーンの険しい登りとなり、最初にカラ・パタールに行ったときに苦労したことを思い出す。しかも、高度が4000mを越え、トレーニング不足が確実に足に現れてきた。私の遅いのを見かねてテジくんがザックを持ってくれる。
登り続けること1時間で、やっとモレーンの上に出て、ハイ・キャンプのロッジが見えてくる。ところが高度が5000m近くなると、ロッジ前の坂を登るのにも息が切れ、我ながら情けなく思う。